不透明感漂う現代社会において自分が学んできた日本武道・空手道が持つ知恵をを少しでも皆様のお役に立てたい。 東京空手倶楽部 代表 瀧川英治

空手道とkarate

日本伝統文化の一つともいえる武道の空手道は、琉球国時代より熟成されてきた、当時の沖縄地方独特の体術が日本の剣術や柔術の理合を取り入れ完成されたものです。
日本の技芸には、その名前の後に道(どう)とつくものが多くみられますが、これは技を錬磨・習得する過程において心も同時に磨くことを意味し、技芸修行最大の目的とするものです。
沖縄唐手(とうで)術として東京で開催された体育博覧会にて紹介された、剣術や柔術とはまったく異なる動きをする空手道は当時の大学生たちの心を大きく動かしました。
そして間もなく各大学に空手部が誕生し、卒業した学生たちによって日本各地のみならず、世界各国に広がりを見せ、現在では世界192の国と地域、約1億ともいわれる愛好者を持つまでに至りました。
世界各国、特に西欧諸国の人々においては、その長い手足を変幻自在に操ることで、自分の身を守ることができる空手道は、男性に比し体力的に弱い女性でも身に着けることができる護身術としても受け入れられましたので、日本国内に先駆け多くの女性空手道修行者を産むことになります。
東京で初めて紹介された当時の空手道は独り稽古を行う手段である”形(かた)”の徹底的な錬磨で、自己と対峙し強い精神力を養成することこそが空手道修行の最大の目的であり、現在でも多くの空手家が日々、形(かた)の鍛錬に明け暮れています。
同時に若い学生たちは好奇心旺盛ですから、空手道の技の威力を試してみたいという気持ちが芽生えてきます。
突き蹴りの技の威力や錬磨した肉体の強靭さをアピールするために、空手道修行の本道からは少し外れたともいえる、試し割り等を行ったことで世間の人たちを、空手道と聞くと瓦や板を割ることと勘違いさせてしまったことは否めません。
また、学生たちは実際に相手と対峙する組手を試合化する模索を始めますが、殺傷力の強い技の応酬を行えば、技の試し合いではなく傷つけ合いになり、本来の試合とならないことに気づきました。
そこで優秀な学生たちは強い突き蹴りを相手の身体の急所寸前で制御し合う試合方式を試行錯誤しながら考え出します。
この試合方式の採用、普及により空手道の試合が世界各国で開催され、ルールの研究、開発が進み、空手道は多くの人々から愛好される安全な競技スポーツの仲間入りを果たします。

競技スポーツの歴史は周知のごとく、欧米各国に一日の長があるわけですから、勝敗で優劣を競い、観衆に評価されることで成り立つスポーツ競技にすり合わせを行ってきた結果、日本伝統文化独自の精神は影を薄め、内面より具現化された技術や精神が求められた末に空手道の試合は、競技スポーツとして世界のKARATEとなり爆発的な拡がりを見せることになります。
しかし、研磨された強い技を制御し合うことを競うという、高い精神性が綿々と受け継がれていることで、KARATEは世界平和を実現する大きな可能性を秘めた、まさに平和の祭典にふさわしい競技と評価されました。
平和を希求してやまない日本国民の叡智の結集のもと、2020年に開催される東京オリンピックで採用された新種目ですから、その潜在能力を余すところなく世界に示してくれることでしょう。